W. Axl Rose - Part 2アクセル・ローズ 2

● 1992年、アクセルはローリング・ストーン誌に子供の頃に虐待された経験について告白した。そして、このインタビューのしばらく後に友人デル・ジェイムズとのプライベートな電話インタビューでも、自身の辛い経験などについて話している。ここでは、その両インタビューの一部を紹介。
W. Axl Rose

1日中、ホテルの部屋で、目を通さなければならない山のようなファックスや書類を眺めていた。それから、突然どうにかなっちまったんだ。ハリバートンのブリーフケースを手にすると、部屋の調度品を片っ端から壊した。ときどき、なにが現実で、なにが現実じゃないのかわからなくなる。
(アクセル・ローズ)


ショウが遅れることについて

オレだって客を座らせたまま待たせるなんて嫌なんだけど、でも、頭がおかしくなりそうなんだよ。あのステージが遅れている30分から2時間くらいの時間は、オレにはまさに生き地獄のようなものなんだ。そういう時って何とかしてこの状態から抜け出せないものか、自分には出来ないのだろうか、っていう意識から開放されるように祈っているくらいだからね。

精神分析治療を始めていて、セラピーの過程ですさまじく深刻な感情的な問題が表面化して、おまけにショウが4時間先に控えているとしたら、こりゃあもうステージに出る前にどうにかして気持ちの整理をつけなくちゃならないんだよ。さもなくば "Welcome to the Jungle" の真っ最中に泣き出しちゃったりしちゃうからさ。

オレにとってステージに上がることは、ときどきとてもハードなことだよ。というのは、オレ自身が様々なことを超越して”勝てる”と感じないと、ステージには立てないからなんだ。自分で”勝てる”と思い、オーディエンスがお金を払っただけの価値のあるショウをやれると思わない限り、オレはステージに上がれない。精神上の健康、様々な精神的外傷から生き抜くこと、そして心の平和のために、オレは戦っているんだ。


セラピーを通して

ここのところいろいろなセラピーに取り組んできて、その結果わかったのは、自分が女性に対して並々ならない憎悪を抱えてたってことだったんだ。基本的にはオレは赤ん坊の時から母親に拒絶されてきたんだ。つまり、おふくろはオレよりも全てにおいて義理の父親を優先させ、オレが義父に虐待されてもそれを見過ごしてきちゃったんだよ。いつも一歩退いちゃってというね。
全てが終わってから初めて介抱してくれるというね。だからその場では、おふくろは頼りにならなかったんだ。また、祖母には男嫌いなところがあってね。そういった記憶を遡って分析してみてわかったのは、例えばオレが4歳の頃に祖母が男というものを徹底的に否定しているのを聞いていて、それが深く残っていたんだね。
そのせいで自分の男らしさとも上手く折り合いがつかなくなっちゃったんだ。祖母の男に対する憎悪と、それがもたらした自分が男であることへのぎこちなさ、そんな感情を植付けられたもんだから、やっぱり祖母に対しても、ものすごくわだかまりがあったんだ。


子供の頃の経験

セラピーをとおして何がわかったかとと言えば、おふくろと実の父親の仲は実際にも険悪だったということなんだ。それで人が誰もいなかった時にこの男はオレのことを誘拐したんだ。針が甦ってくるんだ。注射されたのを思い出せる。そしてこの男に性的に虐待されて、オレのことを取り戻しに来たおふくろにも何か酷いことが行われたのをオレは憶えている。詳しいところまではわからないんだけど。でも、その時のことが肉体的な傷跡として残っているんだ。っていうのは、その時に筋を痛めて足を悪くしたからなんだ。
でも、オレはその記憶を全て埋めて、どういうわけか、大人になれたんだ。っていうのは、それに対処する唯一の方法は埋めて忘れることだったんだよ。オレは生き残るためにあの記憶を埋めたんだ。あれを受けいれられたことが一度もなかったからなんだ。この男とおふくろの姿を目撃することでオレは女性に対する非常に暴力的で侮辱的な考えをたくさん吸収していたんだな。オレは2歳で、ものすごく何もかもが自分の中に残るような年頃で、それを目撃したわけだよ。それが女の扱い方だと感じたわけだ。


W. Axl Rose

オレがホモ嫌いだとか言われるけど、もし、2歳の時に父親がオレを犯したんだとしたら、確かにオレはそういう障害を抱えているんだと思う。それは確かに、ちょっとややこしいものになっているよ。


オレは、ペンテコスト派(ファンダメンタリズム=プロテスタント、キリスト原理主義、に最も近いとされる一派)の教会で洗脳されたんだ。オレは決して教会の教えや宗教そのものに反対の立場を取ってるわけじゃない。だけど”Garden Of Eden”の中でも言ってるように、多くの宗教は人間らしさってものをはなからバカにしているようなところがあると思う。オレの行ってた教会は特に、幼児虐待趣味と、悪質なロリコン趣味のひとりよがりな偽善者どもで溢れていたよ。

オレはどこにいても、週に3回から多い時は8回も教会に行かされてた。オレは叩かれ、妹が連中にイタズラされているような状況の中でさえ、オレは日曜学校で聖書を教えたりしてたんだぜ。

ある週、オレは妹とテレビを見ていたんだけど、その翌週になったらオレ達の2番目の父親が、オレ達の見ている番組は全部邪悪なもの、くだらないものだって言って、テレビを家の外に放り出した。音楽を聞くことも許されなかった。何もかもが邪悪だと教えられたんだよ。

セックスに関することや女性に対しても、酷く歪んだ観念を飢え付けられていたんだ。オレは今でも女の子を見たってことだけで、最初に怒られた時のことを憶えてるよ。
正直な話、オレは自分がその時実際には何を見ていたか憶えてないし、その時自分がいくつだったのかも憶えてないけど、とにかく原因はタバコの広告で、2人のビキニ姿の女の子が水から上がってくるっていう絵だった。オレはただテレビの画面を見てただけだったんだ・・・何も考えずに、ただ眺めてただけだった・・・そしたら父親の平手打ちがモロに口に入ってさ、オレは部屋の向うまで吹っ飛んだよ。

人によっては、「まぁ、そんなことは忘れちまえよ」なんて言えるだろうね。でも、本当にそうかい? …冗談じゃねぇよ! オレがそれを望むと望まざると関係なく、その出来事はオレの無意識の奥深くにしっかりと閉じ込められてしまったんだ。
おふくろは継父を失うのが怖かったから、そういうすべてのことにも見て見ぬフリをしてた。彼女はオレや妹や弟が助けを必要としてた時に、その場にいてくれなかったことで、結果的にオレ達が人格的に破壊されていくのに手を貸してたのさ。

……そういうものを目に見えないところに隠してしまうだけでは、今のオレにはもう何の問題解決にもならないんだ。オレはあまりにも長い間、そいつを自分の奥深くに埋めたままにしてきた。”Don't Cry”のビデオの一番最後に墓碑が映るシーンがあるのは、そのせいなんだ。オレはあの教会に来ていたほとんどすべての連中の人生がどんどん悪い方へいくのを目の当りにしてきた。ヤツら自身の中にある偽善が、最後には必ず宿主の身を滅ぼすことになる、そういう意味なんだ。


W. Axl Rose

オレが何に対してもさほど恐ろしいと思わなかったのは、もうずっと前に地獄を見てたからだったんだ。オレは2歳で殺されるところだったのを生き延びたけど、その体験をくぐり抜けたことで、かえってオレは絶えず酷く惨めな気分にさいなまれ続けた。オレはその後28年間、その惨めな気持ちを抱えたままで生きてきたんだ。

オレの継父はオレが3つか4つの時にやって来て、オレは自分の本当の父親が存在することさえ17になるまで知らなかった。オレは自分の自我から幼い時に切り離されてしまっていたし、それを決して取り戻すことはできないってことを、継父は愛と残虐さを混同したような、錯乱した教えを叩き込むことによって、オレに確信させたんだ。彼はオレを可愛がったかと思ったら、次の瞬間には叩きのめしてた。オレは、人間を二つの人格がどんなふうに往き来するのかを学ばなければならなかった…。

たぶん、この先も二歩進んだかと思うと一歩下がるような調子だろうと思うんだ。それでも(その傷を)克服したいって気持ちはすごくある。今は、毎日新しいことばかりだけど、未知のものに対する恐怖に屈して、自分の進歩を止めるようなことはしたくないからね。


これから

オレはガンズ・アンド・ローゼズがいつも持っていた、自分たちをさらけ出すことを恐れぬが故の強さみたいなものをそのまま持ち続けながら、もっと生きることや愛することに親しむような方向に進んでいきたいと思っているんだ。
今のオレは”Estranged”を書いた時みたいな気分じゃない。あの時みたいに、とことん救いようがない状態じゃないよ。もうああいう感情は通り過ぎたね。