Singles - Japan Edition Commentary

● 日本盤シングルの裏面に載っている解説です。
スウィート・チャイルド・オブ・マイン - ウェルカム・トゥ・ザ・ジャングル

スウィート・チャイルド・オブ・マイン / ウェルカム・トゥ・ザ・ジャングル [1988.05.11]

「ハリウッド」という言葉から黄金期の映画を思い浮かべるのは、もう呑気な観光客くらいだ。マリリン・モンローのみやげ品をあさる彼らのバックグラウンドにはうさんくさいロングヘアの連中がうごめいている。ハリウッド・ブルヴァードは、新しいロックンロールの発生の地となった。いつだって最悪の環境から、最強の「悪」が生まれる。61年のリヴァプール、77年のロンドン、87年のハリウッド。最初は忌み嫌われ、いつか人々は取り込まれ、そして主流になっていった各時代の落し子たち。
ガンズ・アンド・ローゼズから、新しいロックンロールの歴史が始動する。


ウェルカム・トゥ・ザ・ジャングル

ウェルカム・トゥ・ザ・ジャングル [1988.11.28]

システムを否定し、マス・メディアを蹴飛ばし、ありとあらゆるスキャンダルを呼び起こし、そしてそれを越える力で、キッズの賛同を勝ち得た。人々に自分たちのコンセプトを強要する必要はなかった。GUNNERSの生き方が彼らの主張だったから。
終息感が漂うこの時代に、ロックンロールは最期の輝きを見た。ロックンロール誕生。パンクでの揺り戻し。そして巨大ビジネスとしてのシステム・ロック。もうどこにも出口はない。巨竜が静かにくちていくように、ロックンロールはじっと立ち止まって全ての終わりを待っていた。
そこに言葉抜きにNOをたたきつけたのがGUNNERSだ。試行の末のシステムナイズを、中心点から否定した。ビジネスの主役が既存の役柄を降りたわけだ。そしてアルバム・シングルともに全米No.1。単なるロック・バンドではない。あなたは今、ロックンロールそのものをGUNNERSに見ている。


パラダイス・シティ - ムーヴ・トゥ・ザ・シティ

パラダイス・シティ / ムーヴ・トゥ・ザ・シティ [1989.03.10]

アンコールが、「当り前」のこと、「ショウの一部」になったのはいつの頃からだろう。かつてアンコールは、バンドとオーディエンスとその日の進行と音と光が全て最高のときのみ実現した。バンドとオーディエンスの融合が魔法を生み出したときのみ、アンコールという宝物が与えられた。だからこそアンコールは特別な出来事であり、その日最も熱い歓声で迎えられたのだ。
そしてロックンロールは高度資本主義の中に巧妙に取り込まれていった。過激なメイクも、社会性を帯びたメッセージも、全てショウ "ビジネス" の一部になった。だからアンコールも、"熱狂のとき" から "約束事" へと落ちて行った。
1988年12月9日、東京NHKホールで、ガンズ・アンド・ローゼズは "アンコール" 本来の意味にかけてステージを降りた。ガンズ・アンド・ローゼズがアンコールにロックンロールの意義を取り戻した。
アルバム "アペタイト・フォー・ディストラクション" "全米700万枚"。アルバム "GN'Rライズ" もトップ5入り。同じアーティストがトップ5に2作送り込んだのは、アメリカでも15年ぶりだ。「アルバム持ってない」なんて、もう恥ずかしくて言えない。


ペイシェンス - ロケット・クイーン

ペイシェンス / ロケット・クイーン [1989.05.25]

アルバム「アペタイト・フォー・ディストラクション」、全米で700万枚以上のセールス。数ヶ月に渡り全米No1とトップ5を往復し、「ハード・ロック期待の新人」から「全米最強のロックン・ロールバンド」へ ─ GN'Rは頂点を極めた。そして、バンド自体のコメントで "中継ぎ" と言われたアルバム「GN'Rライズ」もいきなりトップ5ヒット、ジム・クロウチ以来15年振りの "同一アーティストから2枚のアルバム同時トップ5" の記録も生まれた。
その「GN'Rライズ」のアコースティック・サイド・トップが、この「ペイシェンス」。全ての悪を極めたGN'Rだからこそ生まれた、余りにもイノセントで美しいバラードだ。
ガンズ・アンド・ローゼズは、'80年代を代表するバンドではない。世紀末を彩る "現象" だ。


ナイトレイン - レックレス・ライフ

ナイトレイン / レックレス・ライフ [1989.09.25]

まだ幾つもの間違いがある。GNRとにたようなファッション、似たようなサウンド、似たような言動のバンドを、GNRと一緒に語る過ち。GNRとそのフォロワーは全く異質のものだ。「ストリート云々」というコピー付はもう飽きた。
アメリカで1000万枚のセールスに迫り、ロック史上最も売れたデビュー・アルバムとうたわれる「アペタイト・フォー・ディストラクション」。発売以来既に2年以上経っているのに、セールスは増すばかり、名声は高まるばかり。同アルバムからは全米No1ヒット「スウィート・チャイルド・オブ・マイン」をはじめ、「ウェルカム・トゥ・ザ・ジャングル」「パラダイス・シティ」とスマッシュが続出。断言してもいいが、この作品はロックンロールの永世ベスト10に残るだろう。
GNRは現在レコーディング中。1990年という年に発表されるセカンド・アルバムをだ。1990年という年号は偶然の一致ではない。GNRは地球の運命神が送り出した世紀末への旗手たちなのだ。彼らは真実だけを歌い、君たちの心深い場所に直接語りかける。資本主義が固めた嘘をあばく。しかも本人たちは全く意識せずだ。まるで天使のように無邪気、GNRはノーティな世紀末天使だ。