AC/DC、アクセル・ローズ参加が実現するまで。アンガス&クリフ&アクセル独占インタヴュー

NME Exclusive Interview: Axl Rose And AC/DC On The New Shows, His First Audition And What's Next For The Band
NME 2016.05 By Leonie Cooper

『NME』はAC/DCのヨーロッパ・ツアーに向けての独占取材を許された。ロックの象徴とも言うべきこのバンドが、新しい代役のフロントマンに他でもないガンズ・アンド・ローゼズのアクセル・ローズを迎えて、現在公演を行っている。

アクセル・ローズがブライアン・ジョンソンの代わりをやるかもしれないと最初に噂されたのは今年3月のことだった。35年以上バンドのヴォーカルを務めたブライアン・ジョンソンがツアーをやめるか、さもないと聴覚を永久に失う可能性があると医師に診断されたためだ。

『NME』は、AC/DCのギタリストであるアンガス・ヤングと、ベース・プレイヤーのクリフ・ウィリアムズに会ったほか、5年ぶりにアクセル・ローズのインタヴュー許可をもらい、ロック界のビッグ・ネーム二つがどのような経緯でタッグを組むことになり、愉快でエキサイティングな形に収まったのかを聞かせてもらった。

リハーサルの調子は?

アンガス「かなりいい感じだよ」

アクセル「彼らは最高さ。だってもう出来上がってるんだからさ」

最初のリハーサルの感じは?

アンガス「いい感じだった。初日にすぐに分かるんだ。もし何かが……」

アクセル「誰かがどれだけマズいか分かるんだよ」

誰かよくないメンバーがいたとか?

アクセル「俺だよ。でも、彼らは構わずリハーサルしたよ。『ねえ、来週また来てやってみてくれ』ってね」

練習の積み重ねで完璧が生まれるんですね。ツアーが始まりますが、今の気持ちはいかがですか? 普段と違った感覚でしょうか?

アンガス「みんな興奮してるよ」

アクセル「違うところはあるんだ。でも、違わないとも言える。だってもう1カ月近くこのバンドのみんなと一緒だし、クルーのみんなと会ってるし、ショウがどういうものなのか理解しているし、ショウを観てるしね。まるでサッカー選手みたいに、ショウの録画とかを観てさ、今日やるべきことは、っておさらいをするんだ。だから、そうだな、違いはあるけど、それは違うショウだからで、違う曲を歌うからなんだ」

AC/DCのライヴを何回ご覧に?

アクセル「俺たち、すごい早い時期に会ってるんだよね、ガンズ・アンド・ローゼズの初期の数年間、ロサンゼルスのザ・フォーラムでやってた時代さ。バックステージで彼(アンガス)とブライアンに会ったんだ」

アンガス「あの交番のお巡りさんのところじゃなかったっけ?」

アクセル「いいや……ええと、あれは2回目だったよ!」

どれくらいの間、ファンでしたか?

アクセル「その5分前からかな!? いやいや、ガキの頃からさ」

AC/DCがガンズ・アンド・ローゼズに与えた影響はどれくらいでしたか?

アクセル「大変なものだよ。イジー(ストラドリン)と俺にすごい影響があった。そして、スラッシュと会ったら、俺ら3人とも同じだったんだ。スラッシュの彼女がほとんど24時間、毎日彼にAC/DCを聴かせてたんだ。そうでなきゃ、彼女と付き合えなかったのさ!」

足の調子は?

アクセル「少しずつよくなっているよ。おおよそ半ばくらいまで治ったってとこだ。今、やっと前の方に体重をかけ始めたところなんだ。この2、3日前までは歩行もやってなかった」

でも、快方に向かっているのでしょう?

アクセル「ああ、よくなってるよ。2日前病院でレントゲンを撮ったけど、医者が電話でよくなってきてるって言ってた」

もちろん、AC/DCのライヴでもショウのために新しい椅子があるわけですよね?(アクセル・ローズはデイヴ・グロールが昨年のフー・ファイターズのライヴで使用した「王座」をガンズ・アンド・ローゼズのコーチェラでのライヴのために借りている)。

アクセル「椅子そのものは同じだけど、別の台を使ってるんだ。AC/DCのステージ・セットに合うようにしたんだよ。だって、こういう協力し合う場であれじゃあ、丈が高すぎて、尊大だし、クレイジーだって思うからね」

もう少し地味にしたと?

アクセル「かなり地味にしたね」

なぜアクセル・ローズを選んだのですか? どうやってこのすべてが実現したのでしょう?

アクセル「俺が大金を払ったのさ!」

アンガス「十分使わせてもらったよ! アクセルが話してくれるよ。彼は俺らと仕事をしているある男にコンタクトを取ったんだ」

アクセル「彼らのプロダクション関係者の1人で長く彼らと仕事をしてるオピーっていう男で、ストーンズとも仕事をしてる。彼はガンズ・アンド・ローゼズのツアーをちょうど今担当しててさ。このAC/DCのツアーも彼なんだよね。だから、共通して知っているヤツでね。ブライアンについてのニュースを読んで、彼らがどうするつもりなのか知るためにオピーにすぐ電話したんだ。『OK、やってやりたいよ!』みたいな感じじゃなくて、もし俺が助けられるのならっていう感じだった。自分がどの曲を歌えるのかさえはっきりとは分からなかった。ツアー日程だって知らなかった。確認してなかったからね。(でも)オピーが既に俺の名前を候補に挙げていたんだよ!」

あなたが最初にコンタクトを取ったんですね?

アクセル「彼らは俺に『二度と電話してくんな!』って言ったさ」

他の候補者の名前は?

アクセル「俺だけのリストだからさ、他の候補者はなかったんだ!」

アンガス「不正取引ってやつ!」

クリフ「他にも何人かいたよ」

アンガス「たくさん人は集まったんだ……このご時勢だろ。みんな『俺、歌えるぜ』ってね」

アクセル「曲にはたくさんの挑戦が込められているんだ。ブライアンも俺も2人とも、あらゆることをやって1つ1つの曲を特別なものに仕上げているのさ。それぞれの曲が石に刻まれた記念碑って感じだね」

アンガス「ガンズ・アンド・ローゼズで君がやってることは見た。インターネットでね……」

アクセル「インターネットは俺たちの音楽をダメにしているんだぜ!」

アンガス「あれはガンズ・アンド・ローゼズの“Whole Lot Of Rosie”だった。あれを観たから、彼なら……」

アクセル「あれ1曲は出来るなと思ったんだろ!」

アンガス「いや、それで思ったんだ『これはいい出だしだ!』って」

多数のゲスト・ヴォーカルを使おうとは考えましたか?

アンガス「正直に言うと、それは『俺たちが何をやるのか?』によった」

アクセル「彼らは、バンドとして通例ではどうするのか、を決断する過程にあった。それが俺の理解だね。もう起こってしまったことだからね」

アンガス「それがわかった時、危機的状況だったよ。俺たちは決断しなきゃいけなかった。その問題が持ち上がった時、俺たちはマイアミにいたんだ。残念だけど、そういう状況に陥ったら、物事をすばやく決めなきゃいけない。だって、多くの人が待っているからね。俺たちはアトランタで演奏する予定だったから、『これからどうしようか』という感じだったよ。ブライアンの聴覚損失という問題は簡単にどうにかなるものじゃないってわかっていたからね。だから、『どうする?』ってね。選択肢はとても限られていた。もし俺たちがすべて取りやめにしたら、とてもたくさんの法的な問題が起きてしまうわけでさ……」

アクセル「それで俺も、そしてファンも、バンドにそんな経験をさせたくなかった。俺も時々そういうのを少しだけ経験してるからね」

アンガス「彼が参加すると提案してくれてよかったよ。『もし俺にできるなら……』って言ってくれたんだ」

アクセル「俺には想像もつかなかったけどね。つまり、彼らは本当にでかい音で演奏するんだ。彼らには彼らのやり方があって、俺がうまく溶けこめるかまったくわからなかった。だけど、結構うまく取り掛かることができたし、だんだん良くなってきている。クビになる前に最初の公演をうまく切り抜けたいね!」

ツアーを中止しようと思わなかった?

クリフ「始めたことは最後までやり遂げたかったんだ」

アンガス「そして、それが俺たちの一番の目的だった。特に、クリフと俺は。一番長くいるからね。始めたことを達成したかった。ツアー名が『ロック・オア・バスト』だからね。じゃあ、破滅(バスト) しろ!なんて言えないだろ」

アクセル「ハハ! それ最高だな」

ツアーの後どうするんですか? この形でバンドを続ける? 別のシンガーを入れますか? それともブライアンは戻ってくるのでしょうか?

アクセル「ブライアンとどうするかは俺が話す立場じゃないな。彼らの問題だ。他のシンガーが来たら、俺はじっくり毒でも盛ろうかな!」

ブライアンの予後はどうですか? またバンドに加われそうですか?

アンガス「残りの聴力に十分注意しなければいけないんだ。そう彼は言ってたよ。彼はツアーを最後までやり遂げられなくて、ひどく落ち込んでたんだ。最後まで出来たら良かったんだけど、と言ってたからね。これは彼の決断だ。彼が望んだことなんだよ。自分で決断を下したんだ。彼は聴覚障害者になりたくなかったんだよ。そして、バンドをやめると、自分の痕跡をひとかけらも残したくないもんなんだよ。それは完璧に理解できるよ。俺だって指の爪ですら残したくないからね!」

バンドに加わる前にブライアンに何かアドバイスを求めましたか?

アクセル「いや、ブライアンとは話してないんだ。単に、俺たちはブライアンについてそんなに話してないだけなんだけどね。ネガティブな側面についての話はしてないんだよ。公演に向けていろいろやらなきゃいけないタイムスケジュールの話だけでさ。俺にはガンズ・アンド・ローゼズのこともあるし、足の骨折もしたし。骨折が分かった日に俺は病院からリハーサルに向かったんだ。俺の唯一の休みの日は手術の日で、次の日にはリハーサルに戻ったんだよ」

あまり楽しい休日じゃなさそうですね。

アクセル「そうだね、でも、プロフェナル(非ステロイド性抗炎症薬、スプロフェンの商標名)をやったんだけど、なぜマイケル・ジャクソンが夢中になったか分かるよ! あれは自宅で使用するものではないって医者も言ってたね!」

曲の覚え方について教えてですが、すでにすべての歌詞を知ってましたか? また、どうやって覚えましたか?

アクセル「少しずつだよ。無意識にちょっと知っているかなっていう歌詞がたくさんあったからね。リハーサルごとに、20回くらいリハーサルがあるけど、そんな感じなんだ。それで、もし本番で俺がひどくトチッてしまったら、俺をすごく責めていいよ。だって良いリハーサルをやらせてもらったからな」

すべての曲の中で、歌うのに気に入っている曲はありますか?

アクセル「今は、“Hells Bells”だな。今までで一番歌うのが難しい曲で、すごいチャレンジだった。でもコツをつかんだ今は、すごく楽しいよ」

うまく歌えますか?

アクセル「そうだな、リハーサルではうまくできるけど、どうかな……本番が始まるまでは分からないよ。まあ見ててよ!」

チケットを払い戻ししたベルギーの7,000人のファンに一言。

アンガス「最高の夜を逃したな」

アクセル「そうしたファンがいなくなってしまって寂しいよ。彼らのことを全然知りもしないけどさ!」

AC/DCのトリビュート・バンドのフロントマンをオーディションしたって本当ですか?

アンガス「たくさんの人がいろんな人を提案してきた。でも、公平じゃなきゃいけないんだ。何か言ってきた人全員の歌を聴かなきゃいけない。彼らの歌を聴いてね。正しいことをしなきゃならなかったんだよ」

みんなに平等にチャンスをあげたんですね。

アンガス「そう」

アクセル「そして、どういうわけか、また彼らが現れなかった時……」

アンガス「アクセルが路地にいたんだ!」

アクセル「(ビートルズの)“Maxwell’s Silver Hammer”みたいだな……」

(元AC/DCのドラマーで元従業員に殺人の脅迫をした罪で昨年逮捕された)フィル・ラッドについての最新の情報は?

アンガス「フィルとは連絡取ってないな。最近は音沙汰なしだね」

アクセル「俺は今回の他のシンガーについて彼と話したよ!」

スコットランドで公開されたばかりの(1980年に亡くなった前フロントマンの)ボン・スコットの等身大の銅像をもう見ましたか?

アンガス「いや、まだ。俺はいつもまず彼の家族に確認するんだ。俺たちはいつも彼の家族と連絡を取り合っている。だって、時々、事はすでに終わっていて、彼らはそれについて知らされてなかったりするんだ。彼らの名前を勝手に使用するやつらがいて、彼らは何も聞いてなかったりするんだよ。すでに起こった多くのことに対して彼らは不満を感じているよ。みんな彼らの希望を無視して事を進めてるんだ」