ダフ・マッケイガンが3月7日と8日、日本に来襲する。ガンズ&ローゼズのオリジナル・ベーシストであるダフだが、今回は自らのバンド、ローデッドを率いての公演。2008年10月の<ラウドパーク08>フェスティバル以来、約4年半ぶりの来日となる。しかも今回は、ガンズ時代の盟友、スティーヴン・アドラーの新バンド、アドラーをサポート・アクトに迎えてのプレミアム・ツアーだ。
日本上陸を目前にしたダフに、その意気込みを語ってもらった。その前篇をお届したい。
──久しぶりの来日ですね!
ダフ・マッケイガン:本当にそうだな!俺と日本との関係には、波というか、パターンがあるみたいなんだ。1988年から1993年ぐらいは、ガンズでしょっちゅう日本を訪れていた。それからブランクがあって5、6年間ずっと来れなかったんだ。でも2000年頃からローデッドや、友達のJ(LUNA SEA)のゲストとして、何度も日本でプレイすることが出来た。<ラウドパーク>以来しばらくご無沙汰だったけど、今回をきっかけに、また頻繁に来れるようになると良いね。
──2011年に最新アルバム『ザ・テイキング』を発表して以来、どんな活動をしてきたのですか?
ダフ・マッケイガン:世界中をツアーしてきた。『ザ・テイキング』はシネマティックなアルバムなんだ。映像を伴わない映画のような作品だよ。ライヴで演奏することで、アルバムの曲はさらに迫力を増す。ヘヴィでダークだけど、それ一辺倒ではなくて、ひねったユーモアもある。30年のあいだ音楽ビジネスでやってきて、俺が学んだことは、いかにシリアスなメッセージを伝えていても、音楽はエンタテインメントだということだ。楽しくなければ、意味がないんだよ。それを常に念頭に置いてるから、いかにヘヴィであっても、俺たちのショーは最高に楽しいものになる。
──ツアー中の面白いエピソードがあったら、教えて下さい。
ダフ・マッケイガン:俺たちのショーは大抵ファンの年齢層が幅広くて、『アペタイト・フォー・ディストラクション』の頃からのファンから十代のリスナーまでいるんだけど、ブラック・ストーン・チェリーとツアーをやった時は15~16歳ぐらいの若い子ばかりだった。ブラック・ストーン・チェリーと知り合ったのは<ラウドパーク08>の時で、意気投合して一緒にツアーすることになったんだ。あまりに観客が若くて、みんな「イッツ・ソー・イージー」を知らなかった!イントロをプレイしたとき、一瞬沈黙があって、「何、この曲…?」みたいな感じだった。結局、「知らない曲だけど、なかなか良いじゃん!」みたいな感じで、後半すごい盛り上がりだったけどね。ロックンロールでジェネレーション・ギャップを感じたのは、あれが初めてだった。
──今回の来日公演は、どのようなセット・リストで臨む予定ですか?
ダフ・マッケイガン:どんな曲をプレイするか、自分でも判らないんだ。でも、俺のありのままの音楽を感じてもらいたいから、今のメンタリティに一番近い『ザ・テイキング』からの曲がメインになるだろう。それに加えて、ローデッドの『ダーク・デイズ』や『シック』、それから自分の過去であるガンズ&ローゼズやヴェルヴェット・リヴォルヴァーの曲もプレイする。俺が音楽を始めたルーツであるイギー・ポップやミスフィッツの曲も演るだろうな。「アティテュード」はいつだって大ウケするし、演らないわけにはいかないだろう。中盤にはアコースティック・セットも挟み込むし、自由度が高いんだ。いろんな曲をリハーサルして、ほとんどリハーサルしたことがない曲を、その場の勢いで演ってしまうこともある。
──前回の来日ではガンズ時代のナンバーでも「イッツ・ソー・イージー」のような有名曲だけでなく、「ダスト・アンド・ボーンズ」や「ソー・ファイン」などレアな曲もプレイしましたが、今回はサプライズも期待できそうでしょうか?
ダフ・マッケイガン:ヘッドライナー・ショーだし、おそらく20~21曲ぐらいプレイするから、幾つか隠し球を用意していくよ。ネタを明かしてしまうとサプライズにならないから言わないけど、「ユー・アー・クレイジー」なんかもリハーサルしてみたし、もしかしたら演るかも知れない。会場に来たら、きっと驚くことがあるだろう。直前にオーストラリアで10回近くのショーをやって、身体が温まっている状態だし、最高のショーにすることを約束するよ。
──ところで<ラウドパーク08>ではグリグリ眼鏡でステージに上がったのが強く印象に残っているのですが、あれはジョークだったのでしょうか?
ダフ・マッケイガン:違うよ!あの時期、視力がすごく落ちていたんだ。30代になって大学に入り直して、ものすごい量の本を読んでいた。ヴェルヴェット・リヴォルヴァーの頃にはかなり視力が落ちて、メガネを手放せなくなっていたんだ。それまでステージ上では裸眼でプレイしていたけど、その頃、キックボクシングのスパーリングで相手のパンチが見えなくて、鼻骨を折ったんだ。それで視力回復のレーザー手術を受けることにした。今ではよく見えるし、ステージでも眼鏡なしで大丈夫だ。今度は俺がスパーリング相手の鼻骨を折ってやる番だよ。
──どんな本が好きですか?
ダフ・マッケイガン:小説もノンフィクションも大好きだ。作家ではコーマック・マッカーシーが好きなんだ。『ブラッド・メリディアン』は名作だね。ノンフィクションでは今、ウィリアム・L・シャイラーの『第三帝国の興亡』を読んでいるところだ。シアトルは雨が多いからね。みんなコーヒーを飲みながら本を読むんだ。アメリカで最も識字率が高い都市だろうね。オタクが多い町なんだよ(笑)。文章を書くのも好きなんだ。週刊フリーペーパー『シアトル・ウィークリー』にコラムを連載しているし、イギリス版『GQ』でも書いている。俺の人生は常にロックを軸にしているけど、これから文筆業にもっと踏み込んでいきたいね。