1987年10月、ニューヨークのCBGB'sキャンティーンで行われたガンズ・アンド・ローゼズの一夜限りのライブに、約100人のファンが詰めかけた
『アペタイト・フォー・ディストラクション』の発売から数ヶ月後の1987年10月、ガンズ・アンド・ローゼズはニューヨークを訪れていた。当時バンドの人気はまだ絶頂に達しておらず、MTVで『ウェルカム・トゥ・ザ・ジャングル』のビデオが流れるのは決まって深夜であり、ビルボード200において同アルバムは65位どまりだった。モトリー・クルーのアリーナ・ツアーに前座として同行することこそ決定していたものの、彼ら自身のヘッドライン・ショーの会場は主に小さなライヴハウスだった。
それでも、その爆発的なライブ・パフォーマンスが各地で大きな話題となり、バンドの人気は急速に高まりつつあった。10月23日にニューヨーク・シティのザ・リッツで開催されたヘッドライン・ショーの1週間後、彼らはCBGB'sキャンティーン(今や伝説となったCBGB本店の数ブロック先にあったレコード店)にて、一夜限りのアコースティック・ショーを行った。会場を埋め尽くした100人のファンを前に、バンドは『アペタイト・フォー・ディストラクション』から2曲、そしてその1年後にリリースされることになる『GN'Rライズ』から4曲を披露した。
ショーの冒頭で、彼らは機材トラブルに見舞われた。「このマイクはクソだ」映像にはそう毒づくアクセルの姿が収められている。「(スラッシュの)ギターなしじゃこのショーは成立しない。誰か何とかしてくれ」トラブルは無事に解消され、ショーのオープニングを飾った『ユー・ア・クレイジー』の後、彼らは『ワン・イン・ア・ミリオン』を披露した。『GN'Rライズ』に収録された差別と悪意に満ちた同曲は、バンド史上最大の問題作だ。「ポリ公とニガー」という一節を歌うアクセルに対して、アフリカン・アメリカンの母を持つスラッシュがどういう感情を抱いていたのかは知る由もないが、同曲はこの日を含めて、これまでにわずか2度しか披露されていないという。1988年当時は現在とは大きく状況が違ったとはいえ、ゲフィン・レコードが同曲を正式にリリースしたことは人々を驚かせた。
その後バンドは『ユースト・トゥ・ラヴ・ハー』と『ペイシェンス』の2曲を初披露している。後者のアレンジは翌年にリリースされたヴァージョンと大きく変わらないものの、アクセルが紙に記したリリックに目を通しながら歌っていることから、バンドが同曲を書き終えたばかりだったことがうかがえる。ショーは『ミスター・ブラウンストーン』と『ムーブ・トゥ・ザ・シティ』で幕を閉じ、その後メンバーはサインを求めるファンの要望に応じている。MTVが撮影したその映像には、数日間眠っていないと話すアクセルと、ジャック・ダニエルをボトルからがぶ飲みするスラッシュの姿も収められている。
「俺たちは家族も同然さ」カメラの前でアクセルはそう話す。「メンバーはみな互いを信じている。俺たちは絆で結ばれているんだよ」その数ヶ月後に『アペタイト・フォー・ディストラクション』はチャートを駆け上がるが、その代償を払うかのようにバンドの絆は急速に弱まっていった。全員ではないとはいえ、オリジナルメンバーが再び集ったガンズ・アンド・ローゼズは、来月開催されるコーチェラ・フェスティバルでヘッドライナーを務める。
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