ロン”バンブルフット”サールが緊急来日を果たした。
Guns N' Rosesのリードギタリストとして2006年から2014年まで在籍し、17年ぶりのオリジナルアルバム『Chinese Democracy』(2008)の制作にも参加したロン”バンブルフット”サールだが、その後元STONE TEMPLE PILOTSのスコット・ウェイランドとART OF ANARCHYを結成している。スコットが逝去したことにともない活動中止を余儀なくされるものの、現在はMR.BIGのビリー・シーン(B)、元DREAM THEATREのマイク・ポートノイ(Dr)、イングヴェイ・マルムスティーンとの活動で知られるジェフ・スコット・ソート(Vo)らとSONS OF APOLLOを結成し、ニューアルバムも発売されたばかりだ。
今回の来日では、ギタークリニックとライブが開催されるが、来日早々に六本木のライブハウス”新世界”にてプライベート・ギグもおこなわれた。
世界中のスタジアムを満杯にし、アクセル・ローズというロックスターの横で堂々とプレイしてきたスーパー・ギタリストの彼は、とてもリラックスした表情でトレードマークのViger社のダブルネックのフレットレス・ギターを抱えてステージに登場した。軽くサウンドチェックをしつつ、オーディエンスと気さくにコミュニケーションを取り、準備が整ったところで、ショーはスタート。かの有名な「ピンクパンサー」のテーマ曲を超テクニカルアレンジで弾き倒し、エレクトリックギターの表現力の幅の広さにオーディエンスは息を飲んだ。
パンキッシュでポップな曲調ながらも、随所に入れられるテクニカルなタッピングフレーズが彼らしいセンスのオリジナル曲「Abnormal」では、リードを弾きながらリードボーカルという離れ技で、これもオーディエンスを圧倒する。ちなみにロンは歌も上手くレンジが広くロックらしい声質をもっており、ステージでも歌うことがとても楽しそうだ。
この日は、いくつかオリジナル曲をプレイした後、名曲のカバー曲も次々と披露、ポール・マッカートニー「Maybe I'm Amazed」のピアノフレーズを完璧にギターで再現しながら歌い切り、その後もLED ZEPPELIN「Dazed and Confused」、QUEEN「Somebody to Love」などロックのクラシックをループマシンを用いて自分の演奏を重ね、あたかもバンドで演奏しているかのようなパフォーマンスを見せてくれた。KISSのTシャツを着ているファンを見つけると「イイTシャツ着てるね!」と「Detroit Rock City」を披露し(ここでも、ツインギターのハーモニーフレーズを一本で弾くという離れ技を披露)、その後はリクエストコーナーに雪崩れ込んでいった。
THE ROLLING STONES、VAN HALEN、IRON MAIDENなど彼が大きな影響を受けたであろうロックナンバーに加えて、なんとRADIOHEAD、JET、そしてNIRVANAなど、少しイメージのつかない1990年代以降のロックも披露された。自分なりのアレンジを加えつつ、オリジナルに敬意を払ったパフォーマンスは、彼の音楽性の懐の深さを強く感じさせるものだった。「17歳か18歳くらいの頃に一番好きだった曲やって!」というオーディエンスのリクエストに対し、「1986年くらいかな?全く覚えてないよ…どんな女の子と付き合ってたんだっけかな?」とオーディエンスを沸かせたところで、突如BON JOVIの「Livin' On A Prayer」をワンフレーズ披露、さらになぜか「Bodyguard!」と叫ぶオーディエンスに応え、ホイットニー・ヒューストンの「I Will Always Love You」を披露するという、瞬発力の高さを見せつける。サビだけながらも原曲キーで歌い、そのスキルの高さに大きな拍手が沸き起こった。
ここまで、自身が在籍したスーパー・ビッグ・バンド、Guns N' Rosesの曲の披露はなかったが、Guns N' RosesのTシャツを着ているファンを見つけると、「あれほど長いことバンドでプレイしていたのに、全然歌詞を覚えてないんだ(笑)」と話し、「Sweet Child O' Mine」のラストの部分をプレイ。本当に知らないのか途中の歌詞も一部適当に歌い、最後の「Sweet Child~!」というフレーズまで歌い切って、ショーは幕を閉じた。
ギターを弾くこと、歌うことが大好きで、常時笑顔で、ときにユーモアを挟みオーディエンスとコミュニケーションを取る姿は、彼の気さくでナイスな人柄をそのまま映し出していた。そして何よりも音楽とロックギターの素晴らしさと無限の可能性を感じさせるステージは、万感の拍手で讃えられた。11月13日(月)に行われるライブも、きっとそんな素晴らしい空気に包まれる一夜となることだろう。