史上最強のハードロック・バンド、ガンズ・アンド・ローゼズの元ギタリストとして数々の名盤を世に送り出してきたスラッシュ。1994年には、自身のバンド、スラッシュズ・スネイクピットをスタートさせ、2年後の1996年にガンズを脱退。2004年には、ヴェルヴェット・リヴォルヴァーを結成、アルバムを2枚リリース。その後もソロ作品を発表するなど精力的に活動し、昨年2014年9月には最新ソロ・アルバム『ワールド・オン・ファイアー』をリリースしたばかりだ。また、レコーディング技術への貢献が認められ、これまでにブライアン・ウィルソン、ニール・ヤング、スティーヴィー・ワンダーらがその栄誉に輝いた<レス・ポール・アワード>を2015年1月に開催された【NAMM TEC Awards 2015】にて受賞した。来日公演を間近に控えるスラッシュが、これまでの歩み、あの名曲リフの誕生秘話、レス・ポールとの思い出などを語ってくれた。
―― 初めてギターを手にしたのは、何歳の頃ですか?
スラッシュ:15歳になる前の夏。家にギターがあるか祖母に訊いたら、クローゼットからナイロン弦のアコーステイック・ギターを探し出してくれた。すぐに夢中になったね。初めて買ったエレキ・ギターは、メンフィス レス・ポールのレプリカさ。
―― そのギターも祖母に?
スラッシュ:代金を支払うのを手伝ってくれた。質店で100ドルで手に入れたんだ。
―― 現在メインで使っているのは、1959年製ギブソンのレス・ポールのレプリカですよね。このギターの特別なところは?
スラッシュ:1986年に『アペタイト・フォー・ディストラクション』のレコーディングの為、スタジオに入る時に手に入れた。ベーシックなトラッキングは終えていた。いいギターは、交換して無くなってしまっていて、残っていた2本のギターは音があまり良くなかった。そこでオーヴァーダブをやりにスタジオに入る前夜、当時ガンズのマネージャーを務めていたアラン・ニーヴンが、このレス・ポールをくれたんだ。レス・ポールとしては凄くユニークな音がするし、独特なトーンと個性を持っている。今も使い続けているよ。
―― 手にした瞬間から、何かが違うと感じましたか?
スラッシュ:スタジオで弾いた時に、とにかく素晴らしい音がした。要因は、色々ある。ギターそのもの、ピックアップ、その時に使っていたマーシャルのアンプ―SIRのマーシャル100で、どこかのタイミングで改良されてる。それに加え、レコーディングしていた部屋と使っていたサウンドボード。セットアップすべてあってのことだ。ギター1本のおかげだと思ったことはない。それと、エレキ・ギターをちゃんとレコーディングできる凄腕エンジニア、マイク・クリンクと一緒にやったからでもある。
―― 昨年の秋、BBCが行った投票で、レッド・ツェッペリンの「Whole Lotta Love」に次ぎ、ガンズの1988年のヒット曲「Sweet Child o' Mine」が、史上最強のギター・リフに選ばれました。あのリフが生まれた経緯を教えてください。
スラッシュ:俺が、なんとなく作ってたギター・リフで、リフの元となる音符を探究していた。『アペタイト・フォー・ディストラクション』のプリプロダクションを行っていた時に泊まっていた場所のリビング・ルームにみんなで座って楽しんでいた時に、偶然に発見したんだ。そこで、イジー(・ストラドリン)が、バックのコードを弾きはじめ、だんだん曲らしい感じになっていった。
当時、元々スティーヴ・ハンターが所有していた(レス・ポールの)レプリカを持っていたから、多分それを使ってたんじゃないかな。リビング・ルームでは、アンプなど無しでアコースティックで演奏していた―アコースティック・ギターを使ってたわけじゃなくて、単にアコースティックで弾いていたんだ。
上の階にいたアクセルがそれを聴いていたらしく、次の日のリハーサルで「昨日のリフを弾いてくれ。」って言われたから、演奏し始めたら、アクセルが突如詞を思いついて、曲が形になったんだ。
―― 過去のレス・ポール賞受賞者は、音楽の発展のためにテクノロジーと積極的に向き合ってきましたが、スラッシュ自身はどうですか?
スラッシュ:テクノロジーには感謝しているが、過剰に利用したり、音楽の魂を奪われてはダメだ。音のクオリティーの面では、未だにテープを使うのが好きだが、単にアナログだからって使ってるわけじゃない。音がいいから使ってる。デジタルを使わない唯一の理由は、あるケースでは効果的ではないからで、効果的な場合もある。問題は、出来る限り誠実に音楽を捉えるということと、それを可能にする機材を使うということだ。
―― これまでギブソンとともに13本のギターをデザインしていますね。最新モデルが、エピフォンからの“ロッソコルサ”レスポールで、スラッシュ自身のシグネイチャー・ピックアップを使っています。
スラッシュ:セイモア・ダンカンので、俺のレプリカのレス・ポールに使われているアルニコIIをモデルにして作られてるんだ。このピックアップは、良質で、俺がずっと使ってきたものだから、このエピフォン・モデルにも入れるようにしたんだ。
―― デザインをする際に、どれぐらい密に関わっているのですか?
スラッシュ:とても密に関わっている―ギター使われるハードウェアからブリッジのフレットまで。もちろんピックアップやポットもだ。ネックの触り心地、使われるトップや色もそうだ。唯一いじらないのは、レス・ポールの形とヘッドストックの形だ。
―― デザインをするのは楽しいですか?
スラッシュ:元々は、自分のギターをデザインするとこるからきているんだ。自分が使うモデルをカスタムし、それを他の人々も買うことが出来るようになった。そうやって始まったんだ。ギブソンのためにギターをデザインすること夢見て始めたことじゃない。
―― レス・ポールと一緒に演奏した際の、一番印象深い思い出は?
スラッシュ:その昔、レス・ポールとメアリー・フォードについて興味を持ったきっかけは、祖母なんだ。レス・ポールのレプリカを買った時に、「レス・ポールというのは単なるギターの名前ではなくて、ミュージシャンでデザイナーの名前なのよ。」って教えてくれた。初めて彼が演奏するのを聴いたのは、祖母のレコードでだった。
(80年代後半に)ニューヨークのファット・チューズデイズで、彼と一緒に演奏する機会を与えられた時、やりたくてたまらなかった。すごく緊張したさ。2人とも探り探りで演奏していた―これはいつも言ってるんだが、ステージを俺で拭うぐらいに打ちのめされた状態で、まったく彼の演奏に追いつけなかった。だが、この出来事にはとてもインスパイアされて、より練習するようになったし、真剣に自分のプレイの側面に取り組むようになった。自分のプレイがどれだけ上達したか、レス・ポールとのジャム・セッションを基準として考えるようにしたんだ。
もう一つ印象に残っているのは、彼が亡くなる直前、2009年にロックの殿堂で一緒に演奏したこと。90代に差し掛かっていたにも関わらず、素晴らしい演奏だった。
―― 一番好きなエフェクトは?
スラッシュ:どんな時も欠かさず使っているのは、ワウペダルだけさ。自分でコントロールできるから好きなんだ。踏むと自分のサウンドに影響するようなペダルに比べると。昔から良質なファズボックスは好きだ、単に使ってて楽しいから。
―― もし私がスラッシュのシグネイチャー・モデルのレス・ポールと、シグネイチャー・アンプ、ピックアップ、エフェクトを使ったら、同じような音が出せるでしょうか?
スラッシュ:俺好みのサウンドを出すのには最適なツールだと思う。良質なギターとアンプを使うのは素晴らしいことで、カギとなる要素だが、やはりそれを操る人間がメインなんだ。