GN’R来日公演、1月25日横浜公演ライブレポート+ダイジェスト映像

オープニング・アクトに起用されたBABYMETALの熱演を経て、ガンズ・アンド・ローゼズがステージに登場したのは午後7時40分を過ぎた頃のこと。ほぼ定刻である。かつては開演時刻の遅延が取り沙汰されることの多かった彼らだが、現在は違う。これまでのいずれの公演でも、開演の遅れはほとんど生じていない。
1987年発表のデビュー作、『アペタイト・フォー・ディストラクション』に収録の「イッツ・ソー・イージー」で幕を開けたショウは、「ウェルカム・トゥ・ザ・ジャングル」や「ノーヴェンバー・レイン」といった数々のヒット曲を網羅しつつ、スラッシュやダフが参加していない『チャイニーズ・デモクラシー』(2008年)からの楽曲も4曲ほど織り交ぜながら進行。映像を駆使した今日的演出をともないながら繰り出される思い入れ深い楽曲たちの織り成す緩急に富んだドラマは、客席を埋め尽くしたオーディエンスの興奮を途切れさせることがなかった。
ステージ中央にアクセル・ローズ(Vo)、その左右にダフ・マッケイガン(B)とスラッシュ(G)が並ぶという光景だけでも、ファンにとっては奇跡に等しい出来事といえる。なにしろこの3人がステージ上に揃うのは、日本では1993年以来24年ぶりのこと。古くからのファンがこの瞬間を待ち続けてきたばかりではなく、ガンズ・アンド・ローゼズが不在の時代に彼らの存在を知った世代も飢餓感を募らせてきたのだ。ただ、重要なのはそこに渦巻いていた熱狂が、懐かしさにばかり起因するものではないということだろう。ガンズ・アンド・ローゼズが“今”のバンドとして生き、誰も観たことのない光景を目の前に繰り広げている――そのさまにオーディエンスは興奮をおぼえていたに違いない。
アンコール最後の「パラダイス・シティ」を歌い終えたアクセル・ローズが「グッド・ファッキン・ナイト!」と叫び、それまで手にしていたマイクロフォンを客席に放り投げた頃には(これは恒例の場面でもある)、開演から2時間40分が経過していた。その後、全員で横一列に肩を組みながら観衆にお辞儀をし、手を振るメンバーたちの顔には、清々しい笑みが浮かんでいた。
ガンズ・アンド・ローゼズの“奇跡という現実”はまだまだ続いていく。1月28日、29日の両日、さいたまスーパーアリーナでの二夜公演をもって、今回のジャパン・ツアーは文字通りのクライマックスを迎えることになる。かつて一度でもガンズ・アンド・ローゼズに心を動かされたことのあるすべての人、ロックを愛するあらゆる人に、この機会を逸してほしくない。2017年のガンズ・アンド・ローゼズと向き合うことができる機会は、<NOT IN THIS LIFETIME>という今回のツアー・タイトルが示唆する通り、二度と訪れることがないのだから。
文:増田勇一(音楽評論家)
<ガンズ・アンド・ローゼズ NOT IN THIS LIFETIME>
1月25日(水)@横浜アリーナ
観客: 9,000人
・IT’S SO EASY
・BROWNSTONE
・CHINESE DEMOCRACY
・WELCOME TO THE JUNGLE
・DOUBLE TALKIN’ JIVE
・BETTER
・ESTRANGED
・LIVE & LET DIE
・ROCKET QUEEN
・YOU COULD BE MINE
・ATTITUDE
・THIS I LOVE
・CIVIL WAR
・COMA
・GF / SWEET CHILD O’MINE
・USED TO LOVE HER
・MY MICHELLE
・WISH YOU WERE HERE / NOVEMBER RAIN
・KNOCKIN’ ON HEAVEN’S DOOR
・NIGHTRAIN
Encore
・SORRY
・PATIENCE
・THE SEEKER
・PARADISE CITY
(全文+ライヴ画像は以下へ)
barks.jp

(増田さんによる1月21日京セラドーム大阪公演のレポート+画像はこちらに ≫ barks.jp

健全なガンズ、というと言語矛盾のようだが、今、本当にバンドがいい状態にあることが伝わってくる素晴らしいライヴだった。
ほぼ予定時刻通り開演!ということにまず驚き、アクセル・ローズとスラッシュとダフ・マッケイガンが並んでいる……!!!という感動的な事実を目の辺りにしてどきどきし、しかしそうした、「いい意味での事件」性についてしみじみ考える間もなく、最高のロックンロール・ソングが怒涛のように投下され、楽曲の世界感にどんどん引き込まれていった。
代表曲はいっぱいやったけど、ベストヒット・ライヴというコンセプトに縛られておらず、メンバーがのびのびと楽しそうに演奏しているのがとてもよかったし、アクセルのハイトーン・ヴォイスはとてもよく響いていた。
ダフ・マッケイガンが歌うコーナー、22日神戸はザ・ダムドの“ニュー・ローズ”を披露したそうだが、横浜は大阪と同じミスフィッツ“アティテュード”。導入にジョニー・サンダースの“ユー・キャント・プット・ユア・アームズ・アラウンド・ア・メモリー”も歌ってくれたのが、嬉しかった! (昨年6月にはピストルズのスティーヴ・ジョーンズとデュエットしていた http://www.youtube.com/watch?v=nmhGyxGo5eY
ギター・インストによる“ゴッド・ファーザーのテーマ”やピンク・フロイド“ウィッシュ・ユー・アー・ヒア”もやっぱり最高だったが、こうした曲を聴きながら、ガンズ・アンド・ローゼズのロックンロール・バンドとしての得意性を、改めて感じさせられた。
00年代以降、標準装備であるミクスチャー感覚を、ガンズは90年代にロックンロールでやっていた、ということだ。
パンクはもちろん、ボブ・ディラン(“天国の扉”)も、ピンク・フロイドも、ウィングス(“死ぬのは奴らだ”)も、一緒にやれるロックンロール・バンドはまずないし、その節操のない貪欲さ、何があっても壊れなかった生命力こそ、ガンズが最高のロックンロール・バンドである理由のひとつだろう。
26曲、2時間40分! まだ強い余韻が残っていて、やっぱりもう1回観たい!と思わせる。
今回の貴重なガンズ来日は、ファン以外の人にもぜひ観てほしい。
残すは、さいたまスーパーアリーナ2デイズ。
(井上貴子)
ro69.jp

スラッシュ(Slash)、ダフ・マッケイガン(Duff McKagan)が復帰したガンズ・アンド・ローゼズ(Guns N’ Roses)の来日公演。1月25日横浜アリーナ公演のオフィシャル・ダイジェスト映像57秒が公開


amass.jp