2011年、3月7日から26日にかけて、アメリカを代表するロックバンド「ガンズ・アンド・ローゼズ」のギタリスト、スラッシュが所有していたギターやメモラビリアが「ジュリアンズ・オークションズ」にて出品された。断捨離の一環だったのか、引っ越しのためだったのか、過去との決裂だったのか、はたまた音楽活動のための資金捻出だったのか、定かではない。
スラッシュはレスポール(ギター)のコレクターとして有名だが、当時のインタビューでスラッシュはモノを捨てられない性格ゆえにモノが溢れかえる、と答えていた。当時、オークションに出品されたものは多数のサングラス、レザージャケットやギターなどコンサートにまつわるものは何となく理解できる。そして、「膨大」とまで言いたくなる数のソファー、絵画やオブジェなど…、一体どんな家に住んでいたのやら、と思わせてくれる。
乗り物ではハーレーダビッドソンのバイク、スクーター、そして1966年式シボレー・コルベットの出品が話題を呼んだ。コルベットの落札見込み価格は9万ドル~10万ドルであったが、11万5,200ドルで落札された。
スラッシュにとって、コルベットはガンズ・アンド・ローゼズでの成功で手にした大金で初めて買った“高額商品”であったそうだ。1988年に購入した、というから…、やや大げさな表現に聞こえなくもないが、スラッシュの堅実さが垣間見られる話でもある。そして、コルベットを購入するまでスラッシュが乗っていたのは、ホンダCR-Xだったという。
そんなコルベットが再度、ジュリアンズ・オークションズに出品されている。
排気量7リッターの“427ビッグブロック”エンジンを搭載し、マンシー製4速マニュアルトランスミッションと組み合わされている個体だ。最高出力は390ps、最大トルクは460lb-ftを誇る。オドメーターは3万5164マイルを表示しているが、真偽のほどは定かではない、とオークションサイトには記されている。
シボレーのセンターキャップ付きラリーホイールを履き、クラシックな赤いストライプとフードスクープを特徴とするグラスファイバー製の「スティンガー」ボンネットが追加されるなど、マイルドなカスタマイズが施されている。また、コルベット後部の左右に3つ目のテールライトが追加されているのも目を引く変更点だ。窓がフルスモーク仕様になっているのは…、スラッシュゆえに目立ってしまうからだ。
とある雑誌取材では車好きを自称するスラッシュだが、自分で車いじりをするような根気強さは持ち合わせていないことを明言。ハリウッドでカーステレオのボリュームを上げて、ぶっ飛ばすことを是としてきたそうだ。もっとも、ツアーで世界を飛び回っていたのでなかなか乗る機会はなかった、という。
2011年のオークション出品の際、もっとも躊躇したのがコルベットであった、と語っている。オークション会社による車両引き上げに立ち会わなかったのは、むしろスラッシュの胸が痛まずよかった、とも。
2011年にはフロントエンドの修理に伴い全塗装され、エンジンはオーバーホール、ステアリングコラムはリビルトされ、ダッシュボードの入れ替え、経年劣化した部品の交換、レザーシートの張り替えなどが施された、と記されている。もしかして…、軽く事故ったのだろうか…?そのほか2017年にはワイヤーハーネスの交換、2019年にはタイヤ交換、2023年にはバッテリー交換がなされている。
「スラッシュが乗っていた」という付加価値が付いたコルベット、前回の落札見込み価格は9万~10万ドルだったが、今回は10万~20万ドル、とずいぶんな“振れ幅”が設けられている。11月16日が最終入札日となっているが既に最低落札価格には達しており、原稿執筆時点でたった2件の入札ながら10万ドルとなっている。
気になる方は是非、入札してみてはいかがだろう?
Words: Takashi KOGA (carkingdom)
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